Live as if you will die tomorrow
「あぁ…ぶっ叩かれたこと?」
思い出したように言えば、崇は罰が悪そうに頷く。
「叩かれ慣れてはいるんだけど、鞄で叩かれたのは初めてだった。」
「何だよ、いつからMになったんだよ。」
「いやいや、俺はいつもどっちかっつーと前からM…ってそうじゃねぇよ。」
ノリツッコミしてから、崇はまるでまだ痛むかのように、頬を摩る。
「その時さ、気安く触んなって言われたし、ざけんじゃねぇとも言われた。」
空の瓶に残る数滴を丁寧にグラスに落とすと、崇はそれをカウンターの上に真横にして寝かせる。
俺はそれを横目で見ながら、「花音ちゃんも中々言うねぇ。」と笑った。
「本気で怒ってた。」
崇は、笑っているような顔で、呟く。
「あの子さ、零のこと、好きだな。」
「…そんなのいつものことじゃない?嫌いな方が珍しい。」
気付いていたか、と若干驚きながらも素知らぬふりをする俺を見て、崇は続ける。
「そうなんだけど.… うまく言えないんだけどさ、なんか違うんだよ。花音ちゃんは、何かが違う。」
そう言って、瓶の腹を、つと撫でた。