Live as if you will die tomorrow
「バカシ、帰ったの?」
接客を終えた葉月が、空になった崇の指定席を指して訊ねるから、俺が小さく頷くと、「珍しいね」と零した。
「それより…ずっと、零に電話してるんだけど、全然出てくれない。」
「あ、そ」
不貞腐れる葉月に、軽く返事すると、葉月の頬が更に膨れる。
「あ、そ、じゃないでしょー!ここ最近、零の様子がおかしいんだもん。何とかしてよ、お兄ちゃん。」
「零には零のやる事がある。お前の都合で振り回すな。」
いつもより強めに言うと、葉月は項垂れて、黙りこんだ。
「仕事に集中して。ちょっと出てくる。」
そう促し、俺はカウンターから出た。
最近は、葉月に一人でここを任せることも多く、珍しい状況ではない。
だが、俺の機嫌の悪さを、葉月は感じ取ったに違いない。
ーなんで人間なんだよ、俺は。
裏口から外に出た所で、燻る苛々に、腹が立って、足を止める。
ーなんで中途半端に人間なんだ。
無駄な感情のない、人造人間だったら良かったのに。
誰にももらったことのない感情を、何故欲する。
知らない感情なのに、何故ここに在る?