Live as if you will die tomorrow
時が経つのも忘れて。
ー『凛子さんの名字って斉藤だよね。』
ー『え、そうですよ?どうしたんですか、突然。』
いつか、の記憶の断片を辿っていた。
ー『貰ってもいい?』
ー『え?…貰うって…』
ー『じゃ、借りてもいい?』
ー『一体どうしたんですか?燈真様。』
ー『どうもしないよ。ただ、もしも名前が無くなったら、斉藤っていう名字も良いかなって思っただけ。』
ー『おかしなことを仰いますね。燈真様には、継がなくてはいけない立派なお名前がおありですのに。』
そう言って、困ったように笑ったあの人は、今どこにいるんだろう。
ー『良いですよ、こんな私の平凡な名前で良いのでしたら、喜んで差し上げましょう。』
真夜中の、俺の戯言に付き合ってくれたあの人は。
「はは」
あの頃の自分の心情に見える『甘え』に気付いて、ひねた笑いが自分から溢れでる。
俺は、少しでも。
あんな場所でも、繋がりを捨てたくなかったんだろうか。
だから、持ってきたんだろうか。
一緒に、連れてきたんだろうか。
この、俺が。
そんな温もりを求めて。
馬鹿馬鹿しいにも程がある。
変わらないと思っていたけど、20年前の自分は、とんだ甘ったれだったということか。