Live as if you will die tomorrow

零に会いに来た、ねぇ。



崇から受けた報告のそれだけが何度も繰り返されて、嫌悪感が押し寄せてきて。



「やるならもっと上手くやれよ。」



気付けば、呟いていた。


葉月の温さに苛立ちが募る。



衝動的に動かず、もっと計画的に、消せばいいものを。


崇の感情を利用するのも、今回は無駄だ。

崇は櫻田花音に関しては、普段のように動くのを恐れている。

自分が傷付けてしまうのを怖がっている。


それは多分。


自分の感情ではなくて。


空生が、花音に向ける感情に、気付いているからだ。


崇は、空生に。



幸せになって欲しいと願っているから。





「葉月も、崇も、揃って馬鹿ばっか。」



そんな甘い考えだと、直ぐに足元掬われる。





うざったらしい音楽は、自分の気を散らすから、車内は静けさに包まれていて、時折聞こえるのは、エンジンの音のみ。



夜空に浮かぶ、丸い丸い月。



明日にはきっと満月になる。



そしてまた、少しずつ欠けていく。



月を見ると必ず思い出すのはいつも。



幼い妹に読んで聞かせた、つまらない月の絵本。



『ここにおいで。ここには光がある。』




月の言葉。





俺は、言ったろ。


ここには、幸せなんて光は、どこにもないんだって。
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