Live as if you will die tomorrow
「葉月、崇はどこいったの?」
カウンターの中に入って、葉月の背後に、本人にだけ聞こえる声で問うと、分かり易く肩が震えた。
「っあ、お兄ちゃん~、今日はもう来ないんだと思ってたよぉ。しかも今大忙しなんだよねぇ!そこどいてどいて!」
あはは、と白々しく笑い声を立てて、俺の横を通り過ぎた所で、必死で逃れようとする妹の腕をしっかりと掴む。
「葉月。お前、あの女に手を出すなよ。」
「っ」
指の跡が薄っすらと付く程度の力を込めると、俯いた葉月の顔が歪んだ。
「これは忠告じゃない。警告だ。」
低い音を響かせる。
あの獲物は俺が狩る。
お前は、下手くそだから。
「わ、かっ…た」
本心ではない、嫌々ながらの返事を聞いた俺は、それで満足して、ぱっと解放してやった。
「ならよし。で、崇はどこに行ったの?」
にっこり微笑む俺を、恨みがましく見上げながら、葉月は外を指差す。
「なんか、ふらふら出て行ったよ。」
「ふーん?」
花音を置いたまま?
追い出しても、離れなさそうなのに、何かあったんだろうか。
腑に落ちなかったが、わかったようなふりだけして、葉月に仕事を任せ、二階に上がった。