Live as if you will die tomorrow
閉めてある扉を、ポケットから取り出した鍵で開けると、赤いソファの上、ブランケットを掛けられて眠っている女が目に飛び込んできた。
下とは違い、静かな打ちっ放しの部屋。
ローテーブルの上には、口の開いたペットボトルの水。
光の入らない部屋で、無機質な蛍光灯の明かりに照らされる頬は、陽の光の下で見るよりもずっと青白い。
体調が優れなさそうなのは、見るからにで。
「まるで、死んでるみたいだな。」
その様子を見て、笑った。
俺はソファに近寄り、顔の前でしゃがみこみ、まじまじと櫻田花音という女を観察する。
決して、格別なひとりではない。
空生はきっと、誰もが認める、たったひとり。
だが、この女は平凡で、どこにでもいそうで、そして馬鹿な女だ。
空生に見合う女は、他に幾らでも居る。
無防備に眠る姿に、こんな馬鹿な女、ともう一度心の中で毒吐いた。
何も持っていない。
何一つ特別じゃない。
どう見たって、俺の方が有利じゃないか。
そんなのは一目瞭然だ。
なのに。
どうして。
無性に腹が立つ。
「何、コレ。」
涙の乾いた痕が頬に残っているのに気が付き、それを人差し指でツ、と撫でる。
「こんなんで、空生の気が引けると思ってんなら、大間違いなんだよ。」
届かないと知っていながら、呪いでもかかればいいのにと願わずにはいられない。
どうしてか。
俺は、お前が憎くて仕様がないみたいだ。