Live as if you will die tomorrow
今日は、空生とこの女の最後の日。
手が切れる日。
空生と空港で約束してることだろう。
駒としては、動いてくれないと困る。
そして、空生からきちんと別れを申告されないと。
俺はそこに少しだけ、スパイスを効かせてあげれば、ね。
ーそろそろ、起きる頃か?
開店準備を整えて、ふと時計を確認すると、あと20分程で16時になる所だった。
「葉月?」
あとの細かい仕事を任せる為に、妹の姿を捜すものの、見当たらない。
「あいつ…まさか。」
嫌な予感がして、スタッフルームを見上げ、階段を上る。
他が静かだから、途中で僅かな人の声が聞こえ、予想が的中したことを悟った。
ドアの前で、ふ、と溜め息に似た一息を吐き、ノックする。
同時に、直前まで拾っていた、内容は聞き取れない位の小さな話し声も止まる。
言うことを聞かない妹に諦めつつも、苛立ちながらドアノブを回せば、案の定葉月の後ろ姿があって、その背中が凍りついたのも分かった。
葉月の向こうにいる櫻田花音は、ソファから上半身を起こした状態で、顔を強張らせている。
「…葉月、、お前そこで何やってんの?いい加減にしなよ。」
「別に。謝ってただけよ。」
咎めるように言った俺を振り返ることもしない葉月は、完全に開き直った発言をする。
ーどう見たって、謝ってるようには見えないのに、どうして見え透いた嘘を吐くかな。
「もう出てくわ。…じゃあね…花音さん。」
身を翻した葉月は、俺と顔すらまともに合わさずに、部屋から出て行く。
まぁ、俺も、小さな獲物しか見てないけれど。
ずっと見つめていれば。
小さな嵐が過ぎ去るのを目で追っていた櫻田花音が、漸く俺の視線に気付いた。