Live as if you will die tomorrow



















陽が沈む頃。

と、言っても、時計で確認したからそう思っただけで、光のないルナに、僅かな陽が射し込むことはない。

電気が点いているカウンターに行こうと階段を下りると。


「花音ちゃんに、何か言った?」


下りた所で、崇が俺を見上げていた。


「何も。」


にっこりと笑ってやると、崇はムッとした顔をしたが、直ぐに諦めたように、息を吐く。



「崇こそ、どこ行ってたのさ。愛しの櫻田花音を置いて、さ。」


階段を下り切って、茶化すように肩を叩けば、崇はやめろとうんざりした表情を浮かべた。



「ちょっと野暮用済ませてただけだよ。」


「へぇ?」


敢えて追求はせずに、俺は崇の脇を通り過ぎて、カウンターへと涼しい顔して向かう。


この時の俺は、全て自分の考えた通り。

今迄通りに、物事は運び、進んで行くと思っていて。


櫻田花音のことなんか忘れられそうな。頭の中から抹消できそうな。


そんな、変にすっきりとした心情で、平常通りの仕事をしていた。


日曜から月曜を繋ぐ零時に。

それがひっくり返るなんて、思いもせずに。
< 238 / 314 >

この作品をシェア

pagetop