Live as if you will die tomorrow
陽が沈む頃。
と、言っても、時計で確認したからそう思っただけで、光のないルナに、僅かな陽が射し込むことはない。
電気が点いているカウンターに行こうと階段を下りると。
「花音ちゃんに、何か言った?」
下りた所で、崇が俺を見上げていた。
「何も。」
にっこりと笑ってやると、崇はムッとした顔をしたが、直ぐに諦めたように、息を吐く。
「崇こそ、どこ行ってたのさ。愛しの櫻田花音を置いて、さ。」
階段を下り切って、茶化すように肩を叩けば、崇はやめろとうんざりした表情を浮かべた。
「ちょっと野暮用済ませてただけだよ。」
「へぇ?」
敢えて追求はせずに、俺は崇の脇を通り過ぎて、カウンターへと涼しい顔して向かう。
この時の俺は、全て自分の考えた通り。
今迄通りに、物事は運び、進んで行くと思っていて。
櫻田花音のことなんか忘れられそうな。頭の中から抹消できそうな。
そんな、変にすっきりとした心情で、平常通りの仕事をしていた。
日曜から月曜を繋ぐ零時に。
それがひっくり返るなんて、思いもせずに。