Live as if you will die tomorrow




「なんだよ、改まって。何を辞めんだよ?」


サプライズ的別れをか?と、崇がからかうように笑い、グラスを呷った。

それには答えずに、空生は空になった自分のグラスに、側にあったアブサンとは違う、崇お気に入りの酒を注ぐ。

なんだよ、人の盗るなよ、と崇がぼやく。

俺はその一連の動きを、他人事のように見つめていた。



空生が一体何を言おうとしているのか、掴めずに。




「本業、辞める」



空生自身が、「詐欺師」の事を、「本業」と呼ぶのは、初めての事だった。空生は、DJの仕事の方を、「本業」として見ていた筈だ。

「詐欺師」を空生の「本業」としているのは、俺の見方だ。


だから、一瞬、DJの事だと良い方に考えたが、空生は崇ではなく、俺を見ていた。


DJの仕事を空生に与えたのは、崇。
詐欺師の仕事を与えたのは、俺。


「ーは?何言ってんの?正気?」


まさか、俺に言ってんの?


思いの外、低い声が出たが、何とか感情を制する。

そんな俺の心情を知ってか知らずか、空生は黙ったまま、グラスに口を付ける。


「花音ちゃんのこと、好きになった?付き合うの?」


崇の事など構っていられない。

原因はそれ以外考えられない。


俺は、平静を装いながら、躊躇なく訊ねた。





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