Live as if you will die tomorrow

========================


その夜。



「しゅうちゃーん、ごはんおいしーい」



隣の席に座る葉月が、頬にご飯粒をくっつけ、慣れない箸をバッテンにしながら、笑った。




「本当?そしたら私、ここのシェフ目指しちゃおうかな!?」


俺の斜め向かい、つまりは葉月の問い面にいる柊が、嬉しそうに葉月に言った。


「おー、良いねぇ!…お兄ちゃんも、おいし?」


葉月は大きな目を、くるりと柊から俺に移して、訊ねる。


「…美味しいよ。けど、柊さんがシェフになってしまったら、ここの家政婦さん達はお仕事がなくなって困るだろうね。」


「どうして?」


葉月は不思議そうに目を瞬かせた。



「だって、仕事がなかったら、ここに居る必要がないだろ?」


「…じゃあ、凛ちゃんとかも居なくなっちゃうって、こと?」


「…仕事がなくなったらね。」


「やだ!!!しゅうちゃん、シェフになったらダメだよ!」


俺達のやりとりを、僅かに曇った表情で見守っていた柊は、急に振り返った葉月を見て、慌てていつもの顔に戻る。



「あ…うん。もちろん!ただの冗談だよ!」


言いながら、あはは、と取り繕うように笑った。
< 29 / 314 >

この作品をシェア

pagetop