Live as if you will die tomorrow
白熱灯のデスクライトから漏れる光だけを頼りに、伺う部屋の中は、背の高い本棚がひしめき合っていて、洞窟のように見えた。
そして、大きな黒い革貼りの回転椅子に座る父の顔が陰になり、右目だけが威圧的にキラと光っている。
少し寒く、無味の空気。
キリキリ、胃が痛くなるような、緊張感が漂っていた。
「あの…」
「夜が明ける前までに、ここから出て行きなさい。」
大学合格の報告をしようと、口を開きかけた所で、父から出された宣告に、一瞬、何を言われたのか、いや、数秒経っても、理解できなかった。
そのせいで、俺は、口を閉じるのも忘れたまま、直立不動で、父を見ていた。
どんなに目を凝らしても、父の表情は見えてはくれず、父の考えも見せてはくれなかった。
いや。
頭では。
理性では、分かっていた。
理屈では、確率はゼロパーセントではなかった。
でも、そんなことはないと、どこかで逃げていて。
直視しないできたもの。
ー認められた、なんて。
父が俺の事で。
俺の為だけに、時間を取り分けるなんてことは、今迄一度も。
ただの一秒たりとも、なかったのに。
猶予されていた時間が。
切れたんだ。
ーなんて甘い考えを、抱いたんだ、俺は。