Live as if you will die tomorrow
欲しいものは何でも手に入った。
無い物なんてわからないほどに。
何かが欠けていることは知っていても、それが何かかなんて考える事もしなかった。
必要も無かった。
与えられるものは無限で、求められていることは、ひとつだった。
常に優秀で、恥とならない。そして、聞き分けが良く、よく笑う。
それさえクリアしていれば、あとは何でも許された。
俺はそれを、簡単だと思っていたし、当然だとも思っていた。
なぜなら、父は偉い人間で、社会的地位が高い。
権力の塊のような人で、父を知らない人間は、日本には居ない。
そんな立派な家の人間は、やはり立派であるべきである。
他の人間と同レベルになってはいけない。
小さい頃から刷り込まれているその考えは、俺の中にすんなりと存在していた。
権力は人の上に立つ。
物事は、犠牲の上に成り立つ。
それで、正しいんだと、思い込んでいた。