Live as if you will die tomorrow
23
「ちーっす、燈真。頼まれてたの、全部終わったぜ。」
昼過ぎのルナ。
指の間に挟んだ紙切れをピラピラとはためかせて、慣れた手つきで裏口から入ってきた崇。
「早いな。」
階段に腰掛けて、煙を吐いていた俺は、暗号化されたそれを受け取って、笑う。
「当たり前っしょ。そんなん楽勝だし。ご褒美に、酒ちょうだい」
「ーはいはい。」
四角く折り畳み、注意深く煙草の箱に仕舞いながら、腰を上げた。
L'Ombra della luna (オンブラ・デラ・ルナ)
通称オンブラ。
ルナの成員は、ノッテ・ディ・ルーナに属する人間と、オンブラ・デラ・ルナに属する人間とに分かれる。
例えば、崇は、ノッテディルーナでは働かない。
カウンターに来て、飲むだけ。
女を侍らせて良いのも、報酬代わり。
崇の異常な程の情報収集能力は、オンブラでかなり貢献してくれている。
因みに、クラッカーとしても凄まじく、学校に行ってないというのが信じられない。
最初は馬鹿で厄介な奴だと思っていたが、なかなかどうして、使い勝手の良い人材。
今までも、オンブラに情報屋は居たが、崇は別格だった。
「あっ、崇!髪が真っ赤!!!」
二階で、テレビを観ながら寛いでいた筈の葉月が、いつの間にか降りてきて、カウンターに座る崇を指差す。