Live as if you will die tomorrow
「わかったら、表、見てこい」
顎で指図して、俺は崇に背を向けた。
数秒後。
ガタタ、と椅子から落ちた音と、足を引きずるような音がして、崇が外に出たのがわかった。
「ったく。」
誰もいない空間に、やり切れない思い、否、呆れを放って、グラスを磨く。
どちらにせよ、空生が自分の手中に入りそうな可能性は高まったから、よしとする。
「珍しいな、俺」
認めたくはなかったが、どんな代償を払ってでも、あの男を手に入れようとしている自分がいる。
不思議な感覚が、独り言ちさせた。
あの男の壮絶な過去が、俺を引き付けるのか。
それとも、あの男自身にある何かが、惹きつけるのか。
どちらにせよ、同じ匂いがする。
俺たちと同じように。
あいつにも。
名前が無いからだろうか。
理屈づけしてみようと、それらしい理由を並べたてても、どれもしっくりとこない。
ーということは。
薄暗い天井を見上げ。
ー理屈抜きで、ってことか。
はっきりしない答えで、自分を納得させた。