Live as if you will die tomorrow
「…あれ」
名乗ることを極端に嫌がる空生が、崇のはべらせた女に言い寄られて、ルナを出て行った後。
閉店させてから、二階に上がり、スタッフルームのドアを開けて気付く。
ー制服。
ソファの背に掛けられた学ラン。
皺にならないよう、丁寧に畳まれてある。
「取りに来るかな。」
横目でそれを捉えて、独り言ち、テレビの電源を入れた。
空生の就職活動の成果が、芳しくないようだという事は、ここ数日の空生の様子を見ていれば、なんとなくわかる。
ー俺にとっては好都合、だけど。
空生は意外に真面目で、と言うか、父親の事を気にしてか、やけに自立したがっているようだった。
かと言ってそれを口にすることはないし、周囲に頼ろうという考えも毛頭無いらしい。
その考え方は、他力本願な崇とは反対で、密かに俺と同じだった。
give and take
無償で手に入る物等何一つない。