Live as if you will die tomorrow
========================




「ねぇ、『レイ』の子、今日は機械触ってくかな?」


「さぁな。でも、チラっとくらい出てくるんじゃね。」


「気分のってれば、だよね。最近割と多いから、期待しちゃおうっと。」



季節はもう、冬を越えて、限りなく春に近づいて。



カウンターで、シェイカーを振るう俺も、三寒四温の寒暖差に嫌気が差してきた頃。



「はい、シャルドネ。」


「あ、ありがとうございます!」



前に座ったカップルの会話が引っかかり、なんとなしに訊ねてみる気になった。



「『レイ』の子って?」


実はこの所よく耳にする単語で、客の会話の端々に捉えていた。

特に気にもしてなかったのだが。


「あ…えっと…名前わからないから…そう呼んでるだけで…っていうか、お兄さんの方が知ってるでしょう?教えてくださいよ。」


怒ったように訊き返されても、意味が分からない。


「ほら!」


女の前で固まる俺に気を遣ってか、男の方が慌てて口を開いた。


「たまにふらっと、12時に来る人ですよ、金髪の。大抵零時に来るから、誰からかは知らないけど、いつの間にか皆『レイ』とか『ゼロ』って呼ぶようになったんです。」


< 94 / 314 >

この作品をシェア

pagetop