Live as if you will die tomorrow
26
初夏。
「あんまり、人目につかないようにしたいんです。」
「ーえ?お店なのに、ですか?」
「はい。一応自分なりのコンセプトがあって…」
久々に帰った自宅で、業者と設計図を広げながら、話し合っている所に。
ガチャ、バン!
玄関先で乱暴な音がしたな、と思った途端、リビングのドアが勢いよく開いて、制服姿の葉月がブスッとした顔して立っていた。
嵐のような彼女の性格は、中学に上がっても治る事はなく、むしろ磨きがかかった。
何か物言いたげだが、とりあえず今は来客中だ。
「おかえり。今ちょっと仕事の話してるから、部屋に行っててー」
くれる?と続けたかったのだが。
「お兄ちゃん!零が女連れてた!」
常に我が道を行く葉月の耳に届く筈もなく。
みるみる切れ長の大きな目の縁を赤くして、多感な少女は項垂れる。
「ーちょっと、すいません。」
業者の男に断りを入れ、立ち上がって妹に近づき、ひと呼吸置いた。
「葉月。それについては前にも言ったけど、仕方ないでしょ?いちいち見つけて落ち込むことじゃない。」
恋心を隠そうともしない葉月は、空生に出逢ってから何度もアタックしてはかわされている。