神様はきっともう罰しないから
結局撮影が押して(朱鷺さんに圧倒された女の子が泣いて大変だった)、お店を閉めた時には七時に差し掛かろうとしていた。
外はすっかり暗くなって、びゅうっと吹いた夜風が冷たい。
コートの合わせ目を押さえてぶるっと震えた。


「ああ、朱鷺さんの人相がもう少し良ければ、早く帰れたのになあ」

「けん、うるせえ。おい、花。お前、その手じゃメシ作るのも面倒だろ。どっかで食って帰るか」


お店の施錠をした朱鷺さんが言う。


「わあい、やったぁ。朱鷺さん、僕ラーメン食べたい。いつもの喜楽で!」


けんちゃんがぴょんと跳ねた。


「いいぞ。花もそれでいいか?」

「いいんですか、わあ……って、やっぱダメだ。すみません、今日は帰ります」


藍のことを思いだしたのだ。
確か七時って言ってたから、もしかしたらもう帰りついているかもしれない。


「花ちゃん、用事でもあるの?」 


けんちゃんが首を傾げた。


「用事って言うか、田舎から幼馴染が来てるの。待たせたら、悪いから」

「幼馴染、か。そっかぁ。それは仕方ないね。じゃあ、僕が花ちゃんの分までラーメン食べておくよ。背脂とんこつチャーシューだよね」

「ふふ、よろしく。 じゃあ朱鷺さん、すみませんが、今日はここで失礼します」

「おう、じゃあまた明日な」


ふたりに手を振って、駅へと向かった。


< 17 / 23 >

この作品をシェア

pagetop