神様はきっともう罰しないから
「そういや、やっぱりこっちは買い物とか便利だよな」
思いだしたように藍が言った。
仕事帰りに買い物をしようとしたらたくさんスーパーがあってどこに寄ろうか迷ったと言う。
「コンビニもいっぱいあるし。このアパートからでも、徒歩圏内にふたつはあるだろ」
「そうだね。田舎じゃ、コンビニ行くのにも車が必須だもん。ありがたいよね」
「向こうは未だに、二十四時間営業のファミレスないしな。あ、知ってるか? 中学校前の交差点のところに牛丼屋出来たんだよ」
「まじで⁉ 吉牛? すき屋? それとも松屋か!」
身を乗り出した私に、藍が笑う。
「矢田部ぎゅうぎゅう屋」
「は、なにそれ……ってもしかして、精肉屋の矢田部のおっさんの店?」
矢田部のおっさんとは、地元町の名物おやじのような存在だ。
夕方になると店先で牛コロッケを揚げ始め、放課後の中学生の食欲を刺激する。
大きなコロッケはひとつ五十円で、特製どろソースはかけ放題。
あの町で育った人間なら、一度は必ず矢田部のコロッケを買い食いして帰ったはずだ。
「じゃあ、店先のコロッケはなくなったの?」
「まさか。毎日揚げてるよ。お値段は勿論」
「五十円!」
顔を見合わせて、二人でぷっと吹き出した。
「やだ、本当に今もお値段据え置き?」
「そ。あのおやじ、そういうところは頑固だから」
「相変わらずなんだあ」
堅苦しさは簡単には拭えなくて、だけど少しだけ馴染んで、私たちは食事を終えた。
思いだしたように藍が言った。
仕事帰りに買い物をしようとしたらたくさんスーパーがあってどこに寄ろうか迷ったと言う。
「コンビニもいっぱいあるし。このアパートからでも、徒歩圏内にふたつはあるだろ」
「そうだね。田舎じゃ、コンビニ行くのにも車が必須だもん。ありがたいよね」
「向こうは未だに、二十四時間営業のファミレスないしな。あ、知ってるか? 中学校前の交差点のところに牛丼屋出来たんだよ」
「まじで⁉ 吉牛? すき屋? それとも松屋か!」
身を乗り出した私に、藍が笑う。
「矢田部ぎゅうぎゅう屋」
「は、なにそれ……ってもしかして、精肉屋の矢田部のおっさんの店?」
矢田部のおっさんとは、地元町の名物おやじのような存在だ。
夕方になると店先で牛コロッケを揚げ始め、放課後の中学生の食欲を刺激する。
大きなコロッケはひとつ五十円で、特製どろソースはかけ放題。
あの町で育った人間なら、一度は必ず矢田部のコロッケを買い食いして帰ったはずだ。
「じゃあ、店先のコロッケはなくなったの?」
「まさか。毎日揚げてるよ。お値段は勿論」
「五十円!」
顔を見合わせて、二人でぷっと吹き出した。
「やだ、本当に今もお値段据え置き?」
「そ。あのおやじ、そういうところは頑固だから」
「相変わらずなんだあ」
堅苦しさは簡単には拭えなくて、だけど少しだけ馴染んで、私たちは食事を終えた。