神様はきっともう罰しないから
「帰るってか、花のアパートにしばらく住むんだけど、俺」

「……は?」


今なんて言った?
見られたくないと隠していたのを忘れて、がばっと顔を出す。
藍はスマホをタップして、画面を私に突き付けた。SNSの画面に、見慣れた母のアイコン。そして。


『花のアパート、部屋が一つ余ってるはずだからそこ使ってね。
お仕事しながらの藍くんに本当に申し訳ないけど、馬鹿花のお世話をどうかよろしくお願いします』


文末に、可愛らしく赤いハートが散らされており、土下座している猫のスタンプまで添えられている。
さあ、っと血の気が引いた。


「骨折してるって言ったら、花が大変だろうから俺がこっちにいる間世話してやってくれって」

「お母さん、これ、本気……?」

「花のかーちゃん、冗談でこんなこと言わねえでしょ」


ごもっとも。あの人は常に真面目だ。


「で、言いだしたら聞かない人だろ。というわけで、さっき、会社に連絡してマンスリーマンションキャンセルしてきた」

「キャンセルしてきた、って……、マンスリーって……」

「俺の研修期間、一ヶ月。住むとこないから、よろしく」

「は」


まじで? 一ヶ月、私、こいつと暮らさなきゃいけないの……?

ああ、今日は、私の人生どん底日だ。
目の前が真っ暗になった。


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