悲恋-HIREN-
キッチンから出るとまたお客さんが増えていた。
「紗和、指名5本だから全部回れ。」
将希はメモをあたしに渡し、忙しそうにキッチンに入って行った。
春日のほうにも行けるかなぁ。
あたしは指名してくれた5人のほうに回ることにした。
「指名、ありがとうございます。
……………は?」
あ、つい声が出ちゃった。
だってあたしの目の前にいる人物は態度悪いしタバコ吸ってるし………
春日の友達だし………。
「よ、No.1♪」
こいつの名前は隆太(リュウタ)
小、中一緒で春日と仲良しだった。
噂では結構遊びまくってるって聞いたけど。
「なんであたしを指名するの………。」
あたしは少し苦手な相手だった。
「春日は元気かぁ?」
隆太はタバコを消しながら聞いてくる。
「元気だよ。
隆太は荒れてるね?」
「んー、まぁな………。
なぁ春日が入院してるのは知ってるけどよ、お前は大丈夫か?」
隆太は真剣な顔であたしに聞いてきた。
隆太がここに来てあたしを指名した理由はこれだったんだ…………。
心配して来てくれたんだね。
「隆太、ありがと。
実は春日ここにいるんだよ♪」
「………………は?」
あたしは立ち上がって、春日の席に向かい春日を隆太のとこまで連れて行った。
「………隆太か?」
春日はだいぶ変わってしまった隆太を半信半疑に聞く。
「春日か!?
まじかよー、会えるとはなぁ。」
隆太はなんとなく嬉しそう。
「じゃぁ二人でごゆっくり♪」
あたしはそのまま別の指名客のとこに言った。
久しぶりの友達に春日はとても嬉しそうだった。