悲恋-HIREN-
1。
あたしは白いドアを開ける。
開けたドアの向こうにはいつもの光景がある。
「紗和、来たんだ………。」
春日がこっちに気付き、力なく笑う。
しかしそのまま窓のほうに向きを変えた。
窓の向こうには夕日があった。
木は枯れて冬の準備をしてる。
あたしがいるのは春日がいる病院。
いつもお見舞いにきてる。
春日はもう治ることは難しいらしい。
だからあたしは残りわずかな時間、一緒に居ようと決めた。
「春日、寒くなるね。」
「そうだなぁ。
紗和は寒いの嫌いだよなぁ。」
「寒いのは嫌いぃ。」
寒いと冷たくなる……。
青白い顔は怖くて嫌。
「今日ね、CD買ってきたよ!!
春日の好きな洋楽のっっ!」
あたしは鞄からCDを出す。
「別に良かったのに。
ありがとうな。毎日聞くよ。」
「…………うん。」
なんかまた痩せてきてる……。
できれば死なないでほしい。
完治はあり得ないの……?
告白して何もなかった。
そして病気。
あたしと春日はキスをしたり手をつないだりしたことがない。
「紗和、好きだよ………。」
春日は窓を見ながら呟く。
その目は少し涙ぐんでる。
あたしは好きって言われて嬉しいと思う。
けど悲しい気持ちにもなる。
春日の言い方はまるで………
最後みたいだから。