あなたと出逢わなければ 【第一楽章のみ完結】

家の戸締りをして愛車に乗り込むと、
エンジンをかけてサイレンを鳴らし始めた救急車の後に続く。

真夜中の救急車。
搬送された病院で慌ただしく、父さんを乗せたストレッチャーが病院の中に運ばれていくのを見ながら
私は車を駐車場へと停めて、建物の中へと向かった。


処置室の前で立ち尽くす母さん。


お父さんの他にも救急搬送された患者さんがいるみたいで、鳥羽以外の救急車も
到着していて慌ただしかった。



「お母さん、車停めてきたよ」

「あっ……楓文」

「お父さんは?」

「今、先生たちと処置室の中」



処置室の前で暫く待ち続けていると、お父さんが処置室から運び出されて
中から看護師さんが私たちを呼ぶ。


中へ入った時、思わず体が硬直する。
そこに居た人は、UNAにそっくりなあの人だったから……。

一気に体の力が抜けて、倒れそうになった時
椅子に座っていたその人が、慌てて支えてくれた。


「すいません」


下を向いたまま反射的に謝罪する。



「大丈夫ですか?
 緊張の糸が途切れてしまったのかな? 
 どうぞ、こちらに座ってください」

促される場所へ着席すると、モニターにはお父さんのカルテが映し出される。


「睡眠中に不整脈を起こして意識を消失されたようですが、
 AEDの処置もあって今は落ち着かれています。
 今日はこのまま入院して頂いて、明日から不整脈の原因を探すために
 集中的に検査をして頂く予定です。

 詳しくは明日担当医からお話があると思います」


そう言って、UNAそっくりのその人はわかりやすく説明してくれた。


「垂髪先生、お願いします」


次の救急車が到着したのか、看護師さんの声がその人を呼ぶ。


「はいっ。行きます。
 んじゃ、入院の手続きお願いします」


そのまま慌ただしく、その人は飛び出していった。





入院の手続きをして、シーンと静まり返った病棟内を移動して
病室へとストレッチャーのまま移動していくお父さん。

心臓周辺には、ポータブルの心電図の機械がつけられてる。


病室に入ったのを見届けて、ステーションで書類を確認すると、
今度は警備室へと移動して、手続きの事務処理を済ませた。


病院を出た頃には、すでに朝日が眩しい時間。

今日……仕事休ませて貰わなきゃ。



「お母さん、お父さんの入院セットも持って来なきゃだから
 一度家に帰ろうか?
 
 9時までにはもう一度、戻ってきたらいいと思うから」


そう伝えて私は今も心配そうなお母さんを支えながら、
愛車へと戻った。


車に戻って、自分の心を落ち着かせるためなのか、
何なのか自分でもわからないくらいに感情に持て余されながら
UNAの歌をかける。
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