あなたと出逢わなければ 【第一楽章のみ完結】
悔しくてそう念じた時、「ごめんごめん。電話、長引いて。楓文ちゃん」
そう言って、先生が近づいてきて私と祥永の間に割って入った。
『UNA……』
祥永と今カノが思わず呟く名前。
「あぁ、赤福氷完全に解けちゃったな」
「ですね……」
「ちょっと場所変えようか」
そう言って先生を私を守るように肩に手をかけて包み込むと、
「君、もっと彼女の本質を知る方がいいと思うよ」
そう言って毒を残して、その場を立ち去った。
状況を感じ取って察してくれた先生の助け舟は優しくて……、
先生も私を思ってくれてるのかもって錯覚してしまいそうになる。
その後も、屋台をまわって買い物をしてはつまみ食いをして、
夜の花火があがる時間まで、同じ時間を過ごした。
花火が打ちあがると肩を寄り添わせて、歓声と拍手を繰り返しながら
夜空を眺めつづけた。
あっという間に楽しい時間は過ぎて、
駅前で先生と別れると花火大会の日は過ぎていった。
初めてのデートはドキドキがいっぱいで、
新たな先生の一面を知ることが出来た。
先生にとってはデートだったのか、
デートじゃなかったのかなんて考えたくない。
だけど……今日一日を過ごして、
もっともっと先生のことが知りたいと思った。