あなたと出逢わなければ 【第一楽章のみ完結】
不在着信 一件 垂髪孝悠。
表示された電話番号に、発信しようと指を近づけた時
再び先生からの着信を電話が告げた。
慌てて指を画面上でスライドして電話に出る。
「もしもし」
「夜分にごめんね」
「すいません。電話でれなくて……。
お風呂入ってて、今上がってきたんです」
って私……何言ってるんだろ。
心臓はバクバクと鼓動を早めていく。
沈黙の時間が辛い。
だって私は……LINEで自分の気持ちを伝えたばかり。
先生のことが好きだって……スタンプと一緒に告白した後。
先生の返事は?
聞きたい、だけどフラれるなら聞きたくない。
複雑な恋心。
暫くの沈黙の後、先生は静かに告げた。
「楓文ちゃんの気持ち、伝えてくれて有難う。
俺も嬉しかった……」
嬉しかった……。
過去形?
次に来る言葉に覚悟を決めた時、先生は嬉しい言葉を続けてくれた。
「本当に俺でいいの?」
俺でいいの?
そんなの決まってる。
今は先生しか考えられない。
先生がUNAに似てるから好きになったんじゃない。
先生の人柄に惹かれたから……離れたくなくなった。
「先生が……いい」
「だったら、楓文ちゃん……違うだろ」
悪戯っぽく電話の向こうで告げる先生。
「たか……はるさん……」
恋人同士になって初めて呼んだ先生の名前は、
何故か凄く照れくさかった。
恋人同士になったUNAの命日。
私たちは、ようやく長い夜を一歩踏み出せたような気がした。