mariage~酒と肴、それから恋~《2》
「別に、予定っていうほどの予定じゃ…」

一人で酒飲むなんて、言えるか。


視線をそらすと、百田は、じっとこっちを見て言った。

「佐藤、彼氏いんの?」


「何、いきなり。百田には関係ないです~」


「彼氏とでも会う予定だったのかなって」


「歓迎会は、一応出とかないとね~」

三十路超えて、彼氏すらいないなんて虚しい。

さりげなく話題をそらす、見栄っ張りな自分に対しても虚しくなるけど。


若くてキラキラした女子たちが歌うラブソングなんて、あたしにはもう似合わない。

サビに入ってますます場は盛り上がる。


手拍子しながら、ヘラッと笑って百田を見た。

「残念だったね?せっかく出世したのに、若い女子営業事務が付かなくて」


「いきなり何の話?」

って疑問な顔であたしを見返した。


「役職付いててある程度人事に口出せる人はみんな若くて可愛い子付けるじゃん。部長代理も。

百田も早く人事に口出せるようになると良いのにねぇ」


“仕事出来る”よりも、女子社員は“若さ”“美貌”。

分かっちゃいるけど、生きにくい世の中だ。
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