mariage~酒と肴、それから恋~《2》
「伊東さん、ありがとう!そう言ってもらえると助かる!でも、何とか出来そうだから、もうちょっと頑張ってみるね」

謙虚な笑顔を向ける。あたしだって営業スマイルは得意だ。


「そっかぁ、お手伝いが必要ならいつでも声かけてくださいね」


「本当にありがとう」


助けなんていらない。自分の仕事は自分でやるよ。

百田狙うなら時間外にして。

…なんて言える訳ないし。


30代事務職なんて再就職先なんてロクにないから辞めらんない。

同僚女子たちとも上手くやってかなきゃいけないんだよね。ああ面倒。


ため息つく間もなく、必死でカタカタパソコンを打ち込み続ける。

こういう作業は嫌いじゃない。


「ただいま戻りました!」

12時過ぎたところで百田が出先から帰ってきた。


パソコン打ちつつ顔だけ向けて「おかえりなさい」って声かけたら、

「……」百田は無言で、じーっとあたしを見てる。


何?首をかしげた。「何か?」
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