意地悪上司に求愛されています。(原題 レア系女史の恋愛図鑑)
カツカツと自分の足音のみが響く廊下。
何度も経験しているとはいえ、人が少なくなったオフィスは気味が悪いものだ。
ギュッとカバンを抱きしめ、足早にエレベーターまで歩く。
そこで知っている背中を見つけた。その人物に見つかると面倒くさいことになりそうで、もう一度営業事業部に戻ろうかと止まった。
だが、あれだけカツカツとハイヒールの音を立てていたのだから、とっくにその人物はエレベーターに誰か向かってきたことに気が付いているだろう。
それに、この男のために来た道を戻るのも癪に障る。
私は無言のまま少し離れた場所でエレベーターが来るのを待ったが、その面倒くさい相手が私に気が付いてしまった。
彼は海外事業部の課長をしている木島健人。私と同じ年だと聞いたことがある。
基本、業務に差し支えのない場合は人の名前は覚えない。役職だけ知っていればことが足りるからだ。
しかし、この男。木島健人の名前は覚えてしまった。
本人が何度も何度も何度も聞いてもいないのに私に言うのだから、イヤでも覚えてしまうというもの。
私はもう一度、木島にバレないよう小さくため息をつく。
何度も経験しているとはいえ、人が少なくなったオフィスは気味が悪いものだ。
ギュッとカバンを抱きしめ、足早にエレベーターまで歩く。
そこで知っている背中を見つけた。その人物に見つかると面倒くさいことになりそうで、もう一度営業事業部に戻ろうかと止まった。
だが、あれだけカツカツとハイヒールの音を立てていたのだから、とっくにその人物はエレベーターに誰か向かってきたことに気が付いているだろう。
それに、この男のために来た道を戻るのも癪に障る。
私は無言のまま少し離れた場所でエレベーターが来るのを待ったが、その面倒くさい相手が私に気が付いてしまった。
彼は海外事業部の課長をしている木島健人。私と同じ年だと聞いたことがある。
基本、業務に差し支えのない場合は人の名前は覚えない。役職だけ知っていればことが足りるからだ。
しかし、この男。木島健人の名前は覚えてしまった。
本人が何度も何度も何度も聞いてもいないのに私に言うのだから、イヤでも覚えてしまうというもの。
私はもう一度、木島にバレないよう小さくため息をつく。