意地悪上司に求愛されています。(原題 レア系女史の恋愛図鑑)

 しかしだ。コレが恋だったとする。
 だけど、そのあと……どうすればいいというのか。今までこんな場面に出くわしたことはないのだから、どう対処したらいいのかわからない。

 木島だってなんとなく私の気持ちはわかっているはずだ。
 それをあえて言わないところに底意地の悪さを感じる。

 こういう時は、男性からアプローチするもんでしょ? そう声に出して言えたらどれほど気が楽になるだろうか。

 今までは全然私の気持ちに関係なく迫ってきたりしていたのに、手のひら返したみたいに大人しくなるなんてズルイと思う。

 あの一件以降、会社での私と木島の関係は恋人だと思われているようだ。
今も課のメンバーから「二人の関係はどうなっているんですか?」と目が訴えている気がする。

 でも、何にもない。なんの進展もないのだから話すこともできない。

「別に何もないわよ」

 シレッと何事もないように言ったが、課の面々はそれを私の正直な気持ちだと受け取らなかったようだ。

「実は寂しいんでしょ? 菊池主任」
「っ!」
「木島課長は待ってますよ、菊池主任から来るのを」

 本当にそうだろうか。木島は私を待っているのだろうか。
 あやふやな気持ちを誤魔化すように、私はビールを煽ったのだった。
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