意地悪上司に求愛されています。(原題 レア系女史の恋愛図鑑)
19 レア系女史の恋の行方は?
「木島課長は待ってますよ、菊池主任から来るのを」
慰労会のときに言われた言葉が未だに耳から離れない。
木島は待っている――― それはNYへ来て欲しいと思っているわけじゃないことぐらい私にもわかっている。
私が彼のことを好きだと言うのを待っている。そういうことなのだろう。
木島の顔を見なくなってひと月。もともとNY支社勤めなのだから、日本よりNYにいる時間の方が長いのは当然である。
そして、ヤツはNY支社で海外事業部課長としてバリバリ仕事をしているのだろう。
しかし、なんだろう。この胸のモヤモヤは。
あの役員会議の日以降、ずっとこの気持ちを抱き続けているのだ。
NYの木島からは、以前のように毎日メール定期便が届いている。
内容は今まで通り、辺り触りのないことばかり。いつ通りである。
だけど肝心なモノが足りない。
そんな気がしてしまう私は、どこかおかしいのだろうか。
ああ、物足りない。何かが足りない……
「そうだ。それなら解決策を求めればいいんじゃないかしら?」
そんな結論に達した私は、入社して初めて有給休暇を取っていた。
病院に行くわけでもない。冠婚葬祭があるわけでもない。
ただの自己都合だ。今までの自分だったら、絶対にあり得ないことである。