意地悪上司に求愛されています。(原題 レア系女史の恋愛図鑑)
「会いたかった……」
「木島さん?」
慌てる私の耳元で、木島さんは熱っぽく囁く。
「メールだけじゃ物足りない。君が足りない……足りなすぎるよ」
「っ!」
「会いに来てくれてありがとう。嬉しかった」
木島はもう一度私を力強く抱きしめてくる。それがなんだかとても嬉しくて恥ずかしくて……思わず私もギュッと彼を抱きしめてしまった。
すると、あちこちから口笛が鳴り、「グッドラック!」などと囃し立てる声が聞こえる。
そこでやっと気が付いた。
ここは人がたくさん集まるオフィス街。そして今はランチ時。そして公園にはたくさんのビジネスマンたち……。
「うわぁぁぁっ!!」
「いってぇ!」
思わず彼を突き飛ばしたが、彼の腕はすぐに私を捕らえた。
「ほら、は、は、離しなさいよ! 海外事業部課長さん」
「まだそれを言うのか? でもまあいい。これからは健人と呼んでよ」
「ばっかじゃないの! 海外事業部の課長で充分よ」
照れ隠しだってことは、木島にはもうバレているに違いない。
だって顔が熱くてどうにかなってしまいそうだから、きっと彼は分かっている。
しかし、木島は私をもっと身悶えさせたいらしい。
背筋に甘い痺れが走るほど、甘い声で彼は囁いた。