意地悪上司に求愛されています。(原題 レア系女史の恋愛図鑑)
「麻友、好きだ」
「なっ……!!」
「もう我慢も限界。ここからは一切容赦しないから。ほら、麻友。俺に言いたいことがあるから、初めて有休を取ってここにいるんだろう?」
やはりすでに木島には通達済みらしい。情報源は営業事業部の面々か、はたまたベビーフェイスのやり手専務か。
どちらにしても、木島に情報は伝わっているのだろう。それも、色々と。
もう、こうなったらヤケだ。何を隠していたって、私の周りのお節介どもは木島に情報を提供してしまうのだ。
それなら開き直ってしまえ。私は、木島のネクタイをギュッと握りしめて叫んだ。
「わかんないけど、貴方に会いたかったのよ。恋とか愛とか全然わかんないけど、貴方に会いたかった。それじゃダメかしら!?」
一瞬言葉を失った木島だったが、ゆっくりと笑顔になっていく。
その笑顔は、私の告白を聞いたから。それがわかっているから見ているのが恥ずかしくて、私はそっぽを向いた。
だが、それをこの男がそれを許してくれるわけもない。
「それを、世間一般では恋って呼ぶんだよ」
「っ!」
そうなのか。これはやっぱり恋というヤツなのか。
しかしながら、恋というヤツはかなり面倒くさいものだと把握している。
仕事一筋で、今まで恋愛をしたことがない女にできることなのか。
急に不安になって木島に聞けば、彼は私の頭をかき抱いてきた。
「できるさ。お堅くて仕事一筋、オフなんていらないから仕事をくれっ真顔で言う人が、有休をたっぷりとって俺に会いにきたんだから」
「そ、そ、そうなのよね……」
フワフワと幸せな気持ちに包まれていたが、現実問題しばらくすれば日本に帰らなければならなくなる。
そのとき、私はどんな顔をして会社に行けば良いというのか。
慌てる私に、木島は嬉しそうに笑って言った。