意地悪上司に求愛されています。(原題 レア系女史の恋愛図鑑)
「早く帰ってきなさいよね」
すでに私の心は覚悟を決めている。
木島に抱かれることも、結婚することも。だが、私には危惧するべきことがまだまだある。
それをクリアしない限りは、木島と一緒になることは不可能だ。
まずは菊池の家をなんとか説得することが先決になるだろう。
それは充分にわかっているのだが、あの父に結婚のことを切り出す勇気がいまだに持てない。
姉に協力を請う方が近道だろう。そう考えてはいるのだが、なんとなく気恥ずかしくて連絡ができていないのが現状だ。
だが、もし木島と結婚となれば……菊池家を蔑ろにするわけにはいかない。
とにかく面倒くさい家であるということだけは、木島本人にも話しておかなければならないだろう。
正直、家のことを考えると結婚は面倒くさい。
それに菊池家に関するとても面倒くさいことなどなどを木島に話さないといけないのがイヤで仕方がない。
家柄重視で頑固者の父がいるということを、木島に知られたくないのだ。
それを知ったが最後。私と結婚するということを躊躇する可能性だってあるのだ。
そうとなれば私と距離を置きたくなるだろう。
そしてそのまま別れるなんて最悪なストーリーになった暁には、父を罵倒してしまうかもしれない。
木島とは一緒にいたい。だが、結婚となると色々と困難な道のりだ。
婚姻届を書く前に、なんとしてでも父を説得しなければならないだろう。
そうしなければ、婚姻届うんぬんの前に私と木島の関係をぶっ潰されてしまう。
早めに姉に相談した方がいい。
頭ではわかっているが、なかなか行動に移せない。
どうしてだろう、と考えて行き着く先は、木島が心変わりをしたら困るからというところにたどり着く。
なんせ、初恋も済ませてなかった私である。
飽きられてしまうかも、面倒だと思われてしまうかも。
そんな不安ばかりが頭を過ぎり、いざとなると幸せに向かって歩き出せないでいるのだ。
大きくため息をついていると、携帯がブルブルと震えた。
たぶんメールだが、一体誰からだろう。
もう一度ため息をついたあと、ジャケットのポケットに手を突っ込む。
そして携帯を取り出しメールをチェックした。
「っ!!」
相手は木島。なんというタイミングの良さというか、悪さというか。
来たのはメールだ。直接話すわけでも顔を合わせるわけでもないのに、こんなに挙動不審になってしまうとは。
木島健人、私にとってはある意味宿敵である。
震える手でメールを開く。木島からのメールはシンプルなものだった。
『今夜空けておいて。残業は禁止』
なんだこれは、という内容だ。
木島は今、NYにいる。私に今夜空けておけという必要性を全く感じない。
今夜、木島から電話が来るのだろうか。だから残業をすることなくまっすぐに家に帰って電話を待てということなのだろうか。
よくわからないが、『わかった。できるだけ残業はしないようにする』とメールを送ると、すぐさま返信がきた。
『なるべく、じゃなくて。絶対に禁止』
これは何が何でも仕事を定時で終わらせろとい命令のようだ。
木島さんらしいな、と忍び笑いをしたあと『了解』とひと言だけ入力してメールを飛ばした。
「さぁて、早めに昼を切り上げて仕事しちゃいましょうかね」
人間というものは本当にゲンキンなものだ。
木島から連絡がくる、と聞いた途端元気になってしまうのだから。
小さく苦笑しつつ、私はスツールから立った。
すでに私の心は覚悟を決めている。
木島に抱かれることも、結婚することも。だが、私には危惧するべきことがまだまだある。
それをクリアしない限りは、木島と一緒になることは不可能だ。
まずは菊池の家をなんとか説得することが先決になるだろう。
それは充分にわかっているのだが、あの父に結婚のことを切り出す勇気がいまだに持てない。
姉に協力を請う方が近道だろう。そう考えてはいるのだが、なんとなく気恥ずかしくて連絡ができていないのが現状だ。
だが、もし木島と結婚となれば……菊池家を蔑ろにするわけにはいかない。
とにかく面倒くさい家であるということだけは、木島本人にも話しておかなければならないだろう。
正直、家のことを考えると結婚は面倒くさい。
それに菊池家に関するとても面倒くさいことなどなどを木島に話さないといけないのがイヤで仕方がない。
家柄重視で頑固者の父がいるということを、木島に知られたくないのだ。
それを知ったが最後。私と結婚するということを躊躇する可能性だってあるのだ。
そうとなれば私と距離を置きたくなるだろう。
そしてそのまま別れるなんて最悪なストーリーになった暁には、父を罵倒してしまうかもしれない。
木島とは一緒にいたい。だが、結婚となると色々と困難な道のりだ。
婚姻届を書く前に、なんとしてでも父を説得しなければならないだろう。
そうしなければ、婚姻届うんぬんの前に私と木島の関係をぶっ潰されてしまう。
早めに姉に相談した方がいい。
頭ではわかっているが、なかなか行動に移せない。
どうしてだろう、と考えて行き着く先は、木島が心変わりをしたら困るからというところにたどり着く。
なんせ、初恋も済ませてなかった私である。
飽きられてしまうかも、面倒だと思われてしまうかも。
そんな不安ばかりが頭を過ぎり、いざとなると幸せに向かって歩き出せないでいるのだ。
大きくため息をついていると、携帯がブルブルと震えた。
たぶんメールだが、一体誰からだろう。
もう一度ため息をついたあと、ジャケットのポケットに手を突っ込む。
そして携帯を取り出しメールをチェックした。
「っ!!」
相手は木島。なんというタイミングの良さというか、悪さというか。
来たのはメールだ。直接話すわけでも顔を合わせるわけでもないのに、こんなに挙動不審になってしまうとは。
木島健人、私にとってはある意味宿敵である。
震える手でメールを開く。木島からのメールはシンプルなものだった。
『今夜空けておいて。残業は禁止』
なんだこれは、という内容だ。
木島は今、NYにいる。私に今夜空けておけという必要性を全く感じない。
今夜、木島から電話が来るのだろうか。だから残業をすることなくまっすぐに家に帰って電話を待てということなのだろうか。
よくわからないが、『わかった。できるだけ残業はしないようにする』とメールを送ると、すぐさま返信がきた。
『なるべく、じゃなくて。絶対に禁止』
これは何が何でも仕事を定時で終わらせろとい命令のようだ。
木島さんらしいな、と忍び笑いをしたあと『了解』とひと言だけ入力してメールを飛ばした。
「さぁて、早めに昼を切り上げて仕事しちゃいましょうかね」
人間というものは本当にゲンキンなものだ。
木島から連絡がくる、と聞いた途端元気になってしまうのだから。
小さく苦笑しつつ、私はスツールから立った。