意地悪上司に求愛されています。(原題 レア系女史の恋愛図鑑)
「お疲れ様、菊池女史」
「お疲れ様ね、海外事業部課長さん」
「まだ俺の名前は覚えてくれないんだな?」
「役職さえ知っていれば、事が足りるでしょう」

 覚えてはいるが、それを目の前の男に言うのも癪な話なので絶対に言わないけど。

 木島健人、三十三歳、独身。色黒で、スポーツマンタイプだ。スラリとした容姿で、身長も180センチ以上はあるだろう。

 黒髪で短く切りそろえられた髪は清潔な印象を与え、それと同時に精悍さも感じる。

元官僚ということで、頭もよければ仕事もできる。
 今、この会社において“旦那さんにしたい男”ナンバーワンの座に君臨しているようだ。

 ど真面目な雰囲気の彼だが、笑うとえくぼができる。
 そうすると一気に可愛く見えて堪らない、とは後輩たちの弁である。
 そんな巷では優良物件である木島健人なのだが、絶対に変わり者だと思う。

 どうやら木島の興味が、片瀬さんから私にシフトしてしまったようなのだ。
 はっきり言って、私の評価というものは決していいものではない。

 仕事はできるが堅物。仕事はできるが出世のことしか考えていない。
 仕事はできるが、かなりの変わり者。

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