意地悪上司に求愛されています。(原題 レア系女史の恋愛図鑑)
あと少しで手に入ると思っていた課長職を、突然海外事業部から栄転してきた男、現営業事業部課長の藤沢に取られてしまって以降、なんだか目標が見いだせずにいるのだ。

 それに藤沢という男は私が大事にしていた後輩、片瀬歩までもかっ攫っていった。
 きっちり仕事ができる子だったのに。寿退社にするだなんて……

 そのことについて文句を藤沢に言えば「他の男に見せたくないから。諦めてほしい」という何とも自己中心的で、傲慢な答えが返ってきた。
 これでは片瀬さんの行く末が心配になるというものだ。

 とはいえ、彼女はとても幸せそうにしていたので、これはこれで良かったのかもしれない。しかし、惜しい人材を失ったものだ。

 まぁ、片瀬さんの件はいい。諦めた。

 しかし、今の私は課長職へのポスト奪還より、なんとも面倒くさい案件に頭を悩ましているのだ。本当は仕事のことだけを考えて生きていきたいのに!

 頭を悩ませているのは目の前の木島だけでない。もう一人、面倒くさい男に目を付けられてしまっているからだ。
 木島は私に害を及ぼしていないので、とりあえずは保留にする。
 だから、もう一人の面倒くさい相手をなんとかせねば。そう思うのだが、そんなに簡単にいかないのが世の常。

(ああ、ダメだ。疲れているから考えがネガティブになってるわ)

 私は木島に悟られないよう、心でため息をつく。


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