意地悪上司に求愛されています。(原題 レア系女史の恋愛図鑑)
「菊池さんの上司から許可が出るとは心強い」
「うちの嫁は渡すことはできないが、菊池女史なら許す」
「それはどうも。その言葉、忘れないでくれよ?」
「了解」
昨日の敵は今日の友。考えてみたらとんでもないことである。
貴方たちは半年前、一人の女性をかけたライバル同士だったはず。
勝者は藤沢課長で、敗者は木島だったわけだが、なんだろう……この同士のような雰囲気は。
片瀬さんを二人の男が取り合っているとき、私は外野で「片瀬さんは厄介な男たちに掴まったものね」と高みの見物をしていたものだ。
しかし、今ならわかる。片瀬さん、あなた本当に頑張ったわね。
いやでも……結局その厄介な男その①と結婚をしてしまったわけだから、やっぱり彼女は今も大変な思いをしているだろう。
私はとにかく目の前の仕事をこなしたいのだ。
恋だの愛だの、結婚だの。
私には必要はないし、関係ない。今後もそのスタンスは守っていくつもりだ。
そもそも私は異性に好きだという感情を抱いたことはない。
家族愛などはわかるが、異性同士の愛は理解できないのだ。
周りがどうしてこうも色恋沙汰に目を輝かせるのか。
仕事関連の話ではなく、全くのプライベート話。そんな内容で盛り上がっている場合ではないはずだ。
「さぁ、みんな。仕事するわよ」
声に厳しさを滲ませれば、部下たちは「はい!」と飛び上がるように返事をし、仕事へと戻っていく。
それを見届けたあと、私はすぐ傍にいる厄介な二人の男を睨み付けた。