意地悪上司に求愛されています。(原題 レア系女史の恋愛図鑑)
6 菊池さんは後厄……?

「……厄年だったかしら?」

 今年に入り、なぜか厄介なことばかり続いている気がしてならない。

 スマホで検索をかけ、結果を見て眉を顰める。どうやら後厄らしい。
 あまりそういったものを信じていない私だが、こうも厄介なことばかりが続くと信じざるを得ない。

 近々神社にお祓いに行った方がいいだろうか。それとも元凶となる男どもを成敗してやったほうが早いか。

 そんなことを考えながら、ロビーへと足を運んだ。

 昼休憩に入ったばかりだ。ランチを取るために外へ出かける社員たちでごった返している。
 こんな人目があるところで、社内で大人気の木島と待ち合わせなどしたら……あとあと面倒くさいことにならないだろうか。

 そんなことを考えたが、その考えを頭を振って払拭させた。

(心配するだけ無駄かしら?)

 私は、仕事はできるが変わり者の菊池女史。木島の恋の相手と勘違いする女子社員は皆無であろう。
 そう考えたら気持ちが楽になった。

 そう、私はこんなことで気持ちを乱されたくはない。

 今は営業事業部の課長の椅子を譲る形になってしまったが、まだまだ負けるつもりはない。
 もしかしたら他の部に異動、ついでに昇進なんてことになるかもしれない。

 そうなるためにも一に仕事、二に仕事だ。
 ボールペンを木島から奪い返したら、ランチなどせず社に戻ってこよう。そして明日の会議で使う書類のチェックをしなければ。

 決意を新たにロビーを見回す。しかし、そこには木島より厄介な男が立っていた。

 慌てて視線を逸らしたが、時すでに遅し。その人物に見つかってしまった。
 あからさまに逃げるわけにもいかず、私は心の中で盛大にため息をつく。

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