意地悪上司に求愛されています。（原題 レア系女史の恋愛図鑑）

　それはランチを終え、会社に戻ってからも続くのだからたちが悪い。

　周りの目も気になるし、本当に勘弁してほしい。私は早く仕事がしたいのだ。
　周りでゴチャゴチャしてほしくない。

　それなのに私の部下たちは「主任。そろそろ木島さんに優しくしてあげてくださいよ」と言い出す始末。
　どうやら営業事業部の面々は木島に懐柔されたようだ。

　今まで敵対していた者同士だったはずが、いつからこんなふうになったのだろう。
　なぜか木島に連絡先を教えない私が悪者になりつつある。

　おかしいでしょ、これ。どうして私が彼に仕事以外で接点を持たなくてはならないのか。

　何度も言うが、私の人生は仕事で成り立っている。
　オフなんて本当は必要ないと思っているほどの仕事人間だ。

　仕事が楽しくて仕方がない私は、はっきりいって自分のオフなんてどうでもいいと思っている。
　プライベートで繋がっている友人なんて数人。それで私はいいと思っているし、これ以上は増やしたくないと思っている。

　友達の人数が多ければいいというものじゃない。問題は中身だ。
　会って話したい、繋がっていたい。そんな相手でなければ、いずれどこかで縁が切れてしまうもの。

　実家にいた頃は、私の周りにはたくさんの人がいた。しかし、その多くは私ではない別のモノを見ていた。
　それがわかっていたからこそ、家を飛び出した。
　心から繋がりたい。そう思う相手だけで充分だ。