意地悪上司に求愛されています。(原題 レア系女史の恋愛図鑑)
さぁ、どう出てくる。
田中という人は知らないとしらを切るか。それとも、強引に縁談を勧めてくるのか。
出方を伺っていると、父は大きく息をついて威張り散らした。
「そんな約束などした覚えはない」
鼻息が荒い父の言葉に、大きくため息をつく。
まさかの「約束をした覚えはない」発言だ。相変わらずの父に、怒りを通り過ぎて落胆してしまう。
約束をした覚えがないということは、強引に私を田中と結婚させようと画作しているということなのだろうか。
父は、姉が立候補する前までは、県議会議員をしていた。
それなりに人脈もあり、いろんな伝もあるはず。それなのに、どうして田中を娘の婿にしようなどと考えたのか。
確かに田中の父親は、沢コーポレーションという国内指折りの大企業で常務をしている人物だ。
一応、田中も役付ではある。それだけを見れば、なかなかの優良物件だと思うのだろう。
父親は仕事ができるからこそ、常務という地位を確立しているのだと思う。
しかし、その息子である田中には、父親のように仕事にかける情熱はない。
その辺りをうちの父は何も感じなかったのだろうか。
このまま父と言い合いをしても無駄だろう。私は早々と諦めて天井を仰いだ。