意地悪上司に求愛されています。(原題 レア系女史の恋愛図鑑)
茅野さんの話を聞いて、すぐに思い当たったのは田中だ。
それも自分の父親も一枚噛んでいる可能性は大である。
先日、電話をして釘を刺したのだが、それが気にくわなかったのか。
とにかく父は、私を政治の道具に使う気満々のようだ。
(まずは落ち着け。大丈夫、まだ姉さんからは何も連絡が来ていないわ)
こんなに大事になっているのだ。姉さんの耳に今回のことが入っていないわけがない。
もし、姉さんの耳に入っていれば父を止めてくれるなり、私に連絡をしてくるなり、何かアクションを起こしてくれるはずだ。たぶん……
しかし、姉さんは忙しく飛び回っている人だ。もしかしたら父は姉さんに見つからないよう秘密裏に事を進めているのかも……?
考えたくないが、本気でこの縁談を進めようとしているということだろう。
まず間違いなく田中が関わっているはず。
私は、不安に押し潰されそうになりながら、茅野さんから情報を引き出す。
「茅野さん、その情報はどこから?」
「え~、更衣室で聞きました。仕事にしか興味がない菊池さんがついに! ってみんなで大盛り上がりしていましたよ~」
「で、他に情報は?」
そうですね~、と腕組みをしつつ茅野さんは思い出したように言う。