意地悪上司に求愛されています。(原題 レア系女史の恋愛図鑑)
今は、とにかく残り三個がどこに流通してしまっているのか。それを探るのが先であろう。
海外事業部の面々は木島の指示の元、一生懸命今回の商品を探し回ってくれているという。
もちろん営業事業部の面々も必死になって、あちこちに連絡をしてくれている。
その姿を見るたびに、心が揺れる。
私が早くに敗北をしてしまえば……この時間は違う仕事に使えるだろう。
今回のことは、すべて田中の私への恨みから始まったことだ。それなら私自身が終わらせなければならないだろう。
残り五日。常務から言われた期限をすでに半分は終えてしまった。
世界は広い。それも万が一、一般消費者の手に渡ってしまっていたとしたら、探すことは困難を極める。
私の机の中には、昨夜書き終えた辞表を忍ばせてある。いつでも出せるようにと、用意をしているのだが心の整理がついていない。
今回のことで巻き添えを食っている課のみんなに申し訳ないと思う反面、田中に屈すること、そしてなにより自分の父親に屈することはしたくない。
だけど、このままでは屈することになるのだろうか。
モヤモヤする心を説き伏せ、私は再び電話を手に取る。
今はとりあえず何も考えず、仕事に没頭するべきだろう。
私が田中親子と父親に屈するとしても、仕事の片だけはつけておきたい。
ダイヤルをプッシュしようとしていると、鼻息荒く怒り狂った茅野さんがやってきた。