意地悪上司に求愛されています。(原題 レア系女史の恋愛図鑑)
 私は、沢コーポレーション本社で営業事業部の主任をしている。
 勤続うん年。仕事、仕事、仕事の毎日を送ってきた。

 仕事以外のことには脇見も振らず、とにかく仕事が恋人とばかりにがむしゃらにここまでやってきた。
 出世だけが私の幸せ。仕事こそ私のすべて。

 会社にだってかなり貢献していると自負している。それなのに―――
 
「お腹減ったわ……」

 そういえば昼休憩中に取引先から電話が来て慌ただしかったため、昼ごはんを食べ損ねていた。
 それなのに夕ご飯も食べずに残業……さすがにお腹も減るというものだ。
 
「よし、今日はこれで終わりましょう」

 誰もいないオフィスだ。お疲れ様、と誰にも言われない。
 お疲れ様、と小さく呟いて自分をねぎらった。

 パソコンをシャットダウンし、机の上をキレイに整頓をする。
 すっきりしたデスクを見て、気持ちのスイッチを切り替えた。

 カバンを肩にかけ、忘れ物がないことを確認したあと、照明の電源を切る。

< 9 / 131 >

この作品をシェア

pagetop