命の火
彼女が目を覚まさない。
『ねぇ、起きて。とっくに太陽は上ったよ。』
ひたすら声をかける。
でも、まだ目を覚まさない。
『ほら、見て。今日やっとあの子が来てくれたよ。』
窓の外、あの子─────見かけるたびに彼女と可愛いね、と言いあった三毛猫がこちらを見つめていた。
彼女がずっと見たがっていたから教えたんだけど、だけど、だめだった。
だから、急いでお父さんの元に行った。
彼女が起きない、と。
でも相手にされないからしつこくつきまとった。
『お父さん、彼女が目を開けないんだ、お父さん』
それでも相手にされなかった。


部屋に戻ってきて、
『どうしたの、いつもはもっと早くに起きるのに』
彼女に触れてわかった。
彼女はもう目を覚まさない。
死んだんだ。
『ああ…』
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