沈黙の境界線
まるでお互いがお互いの特別な存在のように感じていた。
一目でいい。
モカを見てみたいとさえ思うように感じ始めたのはモカとメールのやりとりをするようになって一ヶ月が経つ頃。
誰とも関わりたくなかった。
そんな自分が
この段ボールのような小さな箱の中で
外に出ることもせずに
見つけた
心を許せる唯一無二の存在。
それでも自分から会ってみたいとか
モカの声を聞いてみたい。とか
そんなことは言えずにいた。
心を許せる唯一無二の存在でも
私が心を許せたのは
密室空間のこの箱の中だったから。
この外に出るのは
素足で蕀の道を駆けるよりも恐かった。
外に出ることを考えたらフラッシュバックのように蘇るあの無音の惨劇。
呼吸さえ止まりそうになる。