沈黙の境界線
それは無言の惨劇の向こう側。
彼が決めた。
来なくてもいいと言われた。
私には踏み込むことが出来ない場所だから。
でも
彼が教えてくれた。
そこにいてくれると言ってくれた。
無言の惨劇の街灯の下で君を待つ。
そこにはもう二度と
君を襲い縛り上げる恐怖がないことを証明するために。
突然の連絡だった。
あの事件以来、外に出たこともなかった。
ましてや
あの場所なんか・・・
明け方に入った連絡。
モカからのメッセージを何度も繰り返し言葉で呟いた。
「もう二度と君を襲い縛り上げる恐怖がないことを証明するために」
モカが私を救おうとしてくれているのが痛いほど伝わるのに
私は部屋の窓から外を覗きこむだけで精一杯で
それでも
すぐそこに彼がいるのかもしれないと思う期待と
この土壇場で
そこには彼がいなくてからかわれているのかもしれないと・・・
不安でたまらなくなる。