沈黙の境界線
弔い
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「絢香⁉どうしたのっ⁉」
必要最低限の用事がないと部屋から出ない私が、部屋を出てリビングに通じる階段を下りていくと、テレビを見ていたお母さんが、まるで幽霊でも見たかのような驚きかたをした。
そん母親から顔を隠すように、キャップのツバを下まで深く下ろし、パーカーのファスナーを顎の位置ギリギリまであげた。
私から見た視野も他人から見た私の姿も、なるべく目立ちたくなかった。
「・・・ちょっとそこまで出てくる。すぐに帰るから。」
「えっ?・・・出てくるって・・・大丈夫なの⁉」
戸惑う母親の気持ちが分からないわけじゃない。
私自身、まだ恐くて、小刻みに体が震えている。