沈黙の境界線
それでも外に出ようと・・・決心したのは、土壇場で
自分に都合が悪くなった途端に、モカを信じることのできない自分が嫌だった。
モカは来なくてもいいと言ってくれた。
それは本当に私を想っての言葉だと信じてる。
もしも本当に、あの場所に彼がいてくれたなら・・・
何かが変わるかもしれない。
誰も信じられないと思った私の中で
本当に信じて大丈夫な人ができるかもしれない。
たった一人でも・・・
ううん。
一人でも誰かを本当に信じることができたなら・・・
私は孤独から解放されるのかもしれない。
くつ紐をやけに時間をかけて丁寧に結びながら、荒く刻む呼吸を整える。
まだ肌寒い季節だというのに、嫌な汗が額に滲みでてくるのが分かる。
玄関のノブを握りしめて
どれくらいの間、そうしていただろう。
背後に感じる呼吸を殺した母親の心配げな眼差しが背中にささるほど
この場の空気は今、緊張の糸が張り巡らされていた。