沈黙の境界線
外に出ることが出来たことで過去を変えられらるわけじゃない。
きっとあの恐怖は恐怖のままこの心に焼き付いたまま。
傷が癒えるわけでもなければ消えるわけでもない。
それでも
あの場に
モカが・・・彼がいてくれて
私を励ましてくれている。
あの事件を忘れられるわけじゃなくても
殺されかけたあの恐怖を忘れられなくても
私が自らあの場へ行くことで
何かが変わるような気がした。
なにも変わらなくても
何かが変わる。
彼に向かって手を伸ばすと。
力強く、でも優しくこの手を引いて
勢いよくその想像した通りの華奢な腕の中包んでくれる。
モカの匂いがした。
初めて会うのに
まるでずっと前から知っていたような、穏やかな温かさ。