沈黙の境界線
「おめでとう。」
彼の囁きに顔をあげると、不意に深く被っていた帽子をとられて
まだ治りきらない傷と所々、まだ腫れの残るこの顔が露になって、見られるのが恐くて俯こうとすると、彼はその長い指先で私の顎をつかみ
まじまじとこの顔を見つめた。
「・・・ひどい顔でしょ?・・・こんな顔、見られたくなくて帽子を被ってきたのに。」
恥ずかしさと恐さで涙ぐんで聞くと
彼はそっと頬の輪郭を指先でなぞりながら首を横に振った。
「ラテはラテだよ。想像していた通りに綺麗だ。
だから、心配しなくていいから。
俺の前ではありのままでいていいよ。」
初めて会うのに
どうしてこんなにも全てを受け入れてくれるのだろうか・・・
でも、それはお互い様なのかもしれない。
私も
何も知らない彼の事を信じようと思えたんだから。