沈黙の境界線
モカの言う通り。
外に出る勇気がなかった私はここにはいない。
「私、変われたの?・・・かな?」
ぼんやり呟く私に、頷く彼の横顔。
たかだか家から5分先のこの場所まで歩いてきたことをこれほどまでに感激しているのは、他人からみたら大袈裟なことだろう。
けれど私にとっては、奇跡にも近いことだった。
二度とあの小さな箱から出ることが叶わないと思っていたこの数ヶ月。
数ヶ月を短いと捉えるか長いと捉えるかは人それぞれかもしれない。
けれど、私には永遠にも思えるほどの時間だった。
変わらない景色の箱の中。
ただ、虫かごで飼われている昆虫のように
ただ
終わりが来るひを小さな箱の中でひっそりと思い浮かべていた。
あの日々の私は
ここにはいない。